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2016年4月

ETV特集を観ていただいた皆さんに

201604021

ETV特集「忘れられた人々の肖像~画家・諏訪敦 “満州難民”を描く」を観ていただいた皆さん、感謝です。

番組中では3ヶ月ほどの期間の内容を紹介しておりましたが、実際は5年にわたる長期旅行のような取材でした。本当に内外の多くの人に話を聞き続け、事実関係とともに当時の空気、手触りを私の認識の中に再構成することを試みてきました。

あの番組中で行為し、行動していたのは確かに私なのですが、番組自体はETV特集スタッフの作品であり、そこは尊重したかったので、私は一切の編集はおろか、どういうカットを使って欲しいとか、希望を述べたり操作することもしませんでした。

古老達の証言や、私が取材中に見たものにはテレビに適さない、あまりにも残酷な事実や、強すぎる言葉、それぞれの怒りの吐露などの情報も多く、やはりそこは割愛されてましたが、絵画そのものには、それらが何らかの形で反映されております。
もしもあの移民政策にもし視聴者が関心を持ったとしたら、私の行為や発言の端々を辿れば、おびただしい問題点にすぐに突き当たるような作りになっていたと思います。
それが番組中に私が発言していた「一矢報いる」こととは申しませんが、失われた家族の思いとは矛盾することはないと思います。

201604022
カメラの前で仕事をするのは、画家にとってプレッシャーでありますし、手の内を明かすようで、抵抗があるものですが、そういうところで格好をつけたら番組の質に関わりますから、個人情報に類する事項以外は撮影に制限は与えませんでした。
さすがにもう今後は、写真模写云々とか、私の絵画にとってどうでもいい言及のされ方をすることはないでしょう。私が絵画を描くのに、写真は実際あまり役に立ちませんし、そもそもが被写体が不在なのですから。
私の絵画は、もう随分前に一般的な写実という概念とは脱臼しているのでしょう。これはNHKや、ETV特集の取材に協力してきて、その記録が図らずも明瞭にしたことのひとつです。

201604023
発疹チフスのことは、安直な想像で補ってはいけないものですから、正確な知識を求めて、国立国際医療研究センターの 国際感染症センター国際感染症対策室 加藤康幸先生にお教えいただきました。

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顔面は幾つか想定できる選択肢が存在し、何度も描き直すことになりましたが、結局、父親の死に顔を参考にすることとなりました。ひいては、私自身にも似てきました。この顔は骨格を強調した、選択肢の一つ。数日だけキャンバスの上に現れて、上塗り層の下に消えて行きました。

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私があの取材で気づいたのは、祖母にまつわるどんなに過酷なエピソードでも、探し出し、知ることができると、非常に奇妙な感情ですが、ある種の嬉しさも感じたということです。そこに確かに生きていた事を、ひいては存在を確信でき、失われた人たちとの関係を再び切り結び、召喚できるような気がしたからでしょう。

夜遅くまで起きて、最後まで番組をご覧になってくださった皆さん、ありがとうございます。スタッフは放送に耐える内容ぎりぎりまで検討を尽くし番組にしてくれたのだと思います。

見逃した方は NHKオンデマンドでご覧になれます。

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